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ホオノキ(厚朴)


森の王者


高さ20~30メートルほどに成長するホオノキは、葉っぱも大きく食品を包む用途で重宝されてきたことからホホム(包む)⇒ホウ、フウ、フウノキ、ホオノキなどと呼ばれています。

樹皮は生薬として古くから活用され、厚朴(コウボク)と呼ばれます。

半夏厚朴湯、五積散などの漢方でおなじみ ホオノキ樹皮


日本の山野に自生し、巨木ゆえに群生することはほぼありません。落葉する葉と根に他感作用があるので、松の葉と同じように他の植物の生育を阻みます。

下生えのないすっきりしたお庭を造りたいときに、松の葉を土にかぶせる手法があることは多くの方が知っていると思います。ホオノキも同じ手法で、巨木ゆえの森林共存方法を長い進化プロセスのなかで獲得してきたのでしょう。

学名はMagnolia obovata、原始的植物マグノリア(モクレン科)の特徴である大きな花を咲かせ、葉には芳香成分ー殺菌・防腐作用ーがあることから、お寿司やお餅、味噌などを包む郷土料理も有名です。



万葉のうた


貴人に差しかける絹傘になぞらえ、ホオノキの大きな葉をホオガシワとうたう万葉歌が残っています、古くから日本人に親しまれていた植物だということが窺い知れます。またかえし歌でホオガシワは酒を飲むための盃として使っていたことが表現されています。

植物の芳香を嗜み、お酒を召し上がっていた古人を思うと、いまさらアロマテラピーと題して芳香植物云々というのも、なにか可笑しな感じがします。

万葉集は7世紀から8世紀のころ、130年間にうたわれた言の葉です。

ことばを「言の葉」と言い表したのは紀貫之(と、いま検索しました)。平安時代の歌人で、古今和歌集を選出した一人です。

5文字と7文字で綴る表現方法は、神様と交信するための必要条件、というのはどこかで読んだ記憶があります。出口王仁三郎さん関連の本だったかと記憶しています。

ホオガシワという5つの文字にはどのような言霊が秘められているのでしょうか。

母音を抽出して綴るとオオアイアとなり、地上(オ)から天(ア)に向かって、大きく成長する感じが伝わってきます。あいだにエもウもないので、躊躇なく迷いなくどんどん伸びていく印象です。

原始的植物のおおらかさに共通して感じるのは、朴とつで薬にも毒にもなること。植物に限らずですが種として生き残ってきた、いにしえの者たち独特の鈍感力にはいつも魅せられてしまいます。暑い盛りは活発に、誰に気兼ねなく太陽に近づき、寒い時期には冬眠してドリームタイムを生きる、そんな生き方に憧れているせいか、ホオノキやイチョウの木には小さなころから勝手に親和性を抱いていました。



言葉の「葉」は植物の葉?


「言葉」の語源説のひとつに「葉は木によって特長があるように、話すことによって人が判別できることから」というのがあります。

「あの人の言いそうなことだね」とか、「あの人はそんなこと言わないでしょう」とか、わたしたちはなんとなく、言葉の印象と人となりを結びつけて考えます。

葉の大きさや形状、生い茂る量によって、風に呼応し擦れあう音(植物たちのお喋り)にもそれぞれ特徴があります。

ナナカマドの近況報告、ポプラの高らかな演説、ヤシの鼻歌、柳のひそひそ話、白樺の武勇伝、楓の昔話、銀杏のありがたい高説。

言葉のもつエネルギーを言霊ともいいますが、葉の擦れ合う音にも独特のエネルギーがあり、やはり木霊の特徴がそのまま葉に表現されているのではないでしょうか。(と、想像すると楽しくなります)


植物にとって葉は太陽の光を受け取るための受容器でもあります。

葉を大きくして大量に光を受けとるホオガシワは、動物や虫たちからの捕食を逃れるためどんどん巨大になり、高い場所で邪魔されず、光を受容できるようになって、この世界に居場所を獲得したのだと思います。高い場所で風の呼びかけに答える樹々たちは、いったいどんな会話をしているのでしょう。

落葉樹はみなそうですが、1年の半分は葉を落とし休眠する、動物界でいうところの冬眠サイクルをもっているので、ホオノキもドリームタイムの達人にちがいありません。

原始的で朴とつ、大きく美しい花を咲かせ、良い意味での鈍感力を持ち、巨大成長するホオノキのお喋りに、耳を澄ませに出かけるなら初夏のころ、大きな花を咲かせる直前が、最高のお喋りどきのように思います。


木霊の特徴は葉にあらわれる?



庶民から侍まで


ホオノキの樹皮(厚朴)には鎮痛作用、鎮痙作用があるので健胃消化や咳を鎮め去痰する漢方薬として使用され、中国、漢の時代に書かれた最古の本草書『神農本草経』にも収載されています。神農は炎帝神農(えんていしんのう)とも呼ばれる、古代中国の伝承に登場する医療と農業の神様で、南の方位に座し夏を司るといわれています。


ホオノキは巨木でありながら成長が早く、比較的軽くバランスの良い心材をもっています。加工時の安定性が高いことから、日本では下駄の歯にホオノキを利用していたそうです。他にもまな板や、日本刀の鞘など、庶民からお侍さんまで、幅広くお世話になってきました。




*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。


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